SMF Press Vol.10(2012.7.30)裏面

行田にあるものとないもの

清善寺
▲清善寺

誰かが、「行田には何もない」と言う。全員でペンチに腰掛けて、この〈行田アート散歩〉の感想を順番に述べ合うなかでのことである。気がつけばツアーも大詰めを迎え、水城公園に辿り着いていた。昼間はあれほど暑かったのに、夕陽が隠れて少々肌寒くなる。
平成24年5月19日、埼玉県行田市で〈行田アート散歩〉が開催された。とにかく行田を歩いていろいろ見てみようという趣旨のツアーである。20名ほどの参加者が集まり、JR行田駅から観光パスで出発し、目的地に着いた後はバスを降りて徒歩で探索する。順路はさきたま古墳公園、足袋と暮らしの博物館、牧禎舎、保泉蔵、翠玉堂、新町自治会館、新町商店街、そして最後は水城公園にたどり着く。

足袋と暮らしの博物館
▲足袋と暮らしの博物館

市中心部の商店街は閑散とし、「シャッター通り」と化している。一方、その半径5キロ以内には巨大な総合スーパーが堂々たる佇まいを呈している。人々が集まる場所も、買うものもだいたい同じになっていくだろう。この国の至る所で見受けられることだが、行田もその例外ではないかもしれない。
しかしながら、「行田には何もない」という言葉に反論を試みなくてはならない。では、行田には何があったのだろうか。このツアーで印象深かったものを思い出そうとする。1.フライ、2.蔵、3.さきたま古墳公園、4.ゼリーフライ、5.お寺と神社、6.高校生の即興劇、7.………フライか美味しかった。二種類のフライは味か違った。ソース味と醤油味。いくつかの蔵は内装や立地が、それぞれに異なることに気づいた。『足袋と暮らしの博物館』の職人さんが作る足袋は一つ一つ違うかもしれない。『牧禎舎』の藍染めの模様も二度と同じものにはならないだろう。さきたま占墳群を取り囲む草木は毎日少しずつ成長しているかもしれない。それらは微妙な違いである。しかし、違いがある。フライのソース味と醤油味の違いは行田にしかないものであって、それはここでしか体感できないものだろう。そもそもそれらは、このツアーとは無関係に既に行田に「ある」のだ。

ねこ道と呼ばれている路地
▲ねこ道と呼ばれている路地

筆者は、このツアーの主催者の野本翔平さんと知り合いである。彼がパフォーマンスと称してやっていることはけっこう不可解で、去年の8月に前橋で行われたイベントでは、数人で自転車のベルを鳴らしながら歩きまわるパフォーマンスをしていた。彼の作品は、イベントとは無関係の「既存の何か」を利用することのように思える。そう思うと〈行田アート散歩〉も、彼のパフォーマンス作品だったのではないのかと考えてしまう。と言うと何か後味が悪い気がするので、こう付け加えておく。彼の活動は、行田で暮らす人々への愛に満ちている、と。(D.N.)

アートでつなぐ人とまち
浦和にパレードがやって来る!!

パレードが通るなかまち通り
▲パレードが通るなかまち通り

夏は各地で楽しいイベント盛りだくさん。“パレード"と聞いて、何をイメージしますか?賑やかな楽隊や踊り手たち、種々様々な仮装行列などが思い浮かぶことでしょう。来たる8月25日と26日、浦和のまちに出現するパレードはひと味違います。主役は年齢無制限のワークショッブ参加者たち。うらわ美術館で「ひとのかたち」をテーマに作品をつくり、一人一体、布と糸でできた人形を連れて商店街を練り歩きます。
ワークショップの講師を務めるのは、埼玉県出身のアーティスト、秋元珠江さん。2006年にボーラ美術振興財団在外研修員として1年間中国に滞在し、各地の農村をめぐって、民問工芸の作家と一緒に一枚の布から「ひとのかたち」をつくった経験が、活動のアイディアのもとになっているそうです。また美術館の担当職員である田島均さんは、参加者自身の分身ともいえる「人形」からコミュニケーションが生まれ、参加者同士やまちの人たちとも気持ちがつながっていくようなワークショップにしたいと意気込みを語っています。
さてこのアートなパレード、今年が第1回となるアートイベント《アートでつなぐ人とまち・アートフェスティバルうらわ2012》*と同時開催です。2009年よりSMFのプログラムとして行ってきた《多世代交流ワークショップ》が新たな人脈を育み、さいたま市の市民活動サポートセンターからうらわ美術館へ、フェスティバルヘの協力依頼が寄せられたのが、今回の企画の発端でした。田島さんによれば「館内だけではつながれない人と一緒に活動できることが、SMFの事業に参加しての一番の収穫」とのこと。アートを通じて人から人へ、線路を跨いで西から東へ。浦和のまちに生まれつつあるいくつものつながりが、この夏どのような展開を見せるのか。とても楽しみです。(A.O.)

*浦和駅東口前のコムナーレに入居する、さいたま市の公共施設「浦和コミュニティセンター」「市民活動サポートセンター」「中央図書館」が連携して開催。


入間市博物館アリットinformation

すっかり季節も夏らしくなり、日差しが眩しくなりました。毎日外を歩いていると、アイスのように溶けてしまいそうです。この暑い夏を乗り切るには、ヒヤッとしたものが恋しくなりますよね。そんな、ヒヤッとしたい皆さんに朗報です!!この夏、入間市博物館がお化け屋敷に大変身!普段は入ることのできない夜の博物館に皆様をご招待します。そう…博物館で肝試しです。博物館では可愛いオバケや恐いオバケ、面白いオバケと、いろんなオバケに出会えます。もしかしたら、あなたもオバケの仲間入り…!?
お化けのイラスト 8月1日から3日までの3日間、小・中学生を対象としたお化け屋敷ワークショップを開催します。入間のナイトミュージアムを楽しむためのヒントがワークショップにはたくさんあります。そして3日の17時から19時30分の間、もちろん、大人の皆さんもナイトミュージアムにご参加できるようになっています。童心に返って、オバケたちと過ごす一夜はいかがでしょうか。(H.S.)

編集者のつぶやき…

行田のゼリーフライ芙味しかった。鴻巣アート散歩も今から楽しみ。(M.N.)
埼玉って「都会/田舎」「新しい/古い」の中間なんじゃないでしょうか。(O.N.)
【S】30周年【M】MOMASに【F】フォーカスイン!川越市美10周年も見逃せませんね♪(A.O.)
学生最後の夏休みは夜の博物館を満喫します(^^)(H.S.)

執筆:(M.N.)中村誠/(A.O.)小野寺茜/(D.N.)中村隆行/(H.S.)齋藤はるか
編集:SMF広報委員会 発行:Saitama Art Platform 形成準備事業実行委員会
〒330-0061 埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1 埼玉県立近代美術館内
問い合わせ:
文化庁 平成24年度文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業(ミュージアム活性化支援事業)
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