SMF Press Vol.5(2011.3.7)裏面

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『wahっ~!! と言いたくなる。』

ある寒い日、埼玉県立近代美術館がある北浦和から北に電車で約30分の北本市に行ってきました。北本にはwah(ワウ)さんのオフィスがあるのです。wah さんは12月に行われたラウンドテーブルでプレゼンテーションをしてくださったアーティスト。wahのお二方が関西出身だということが分かり、滋賀県育ちのさいとぅーのテンションは上昇。関西から遠く離れた埼玉で出会えたことは何かのご縁だ!! と(一方的に)思い、今回オフィスにお邪魔してきました。

wahの南川氏

wahさんの作品は子どもから大人まで、不特定多数からアイデアを募集し、それを実際にやってしまおうというもの。まずは、みんなで出し合ったアイデアの中から一番面白いものを選び出すことから始まります。決め方は多数決もありますが、なかにはアイデアが出た瞬間に全員一致で決まることもあるそうです。その時はみんなの気持ちがぐーっと盛り上がり、話の雰囲気だけで「これだ~っ!!」と結果が分かるそうです。公園の砂場を本気で石庭にしたり(まるで枯山水)、ヘリコプターで照明器具を空に飛ばしたりと、wahさんがされているプロジェクトには思わず「あほやなぁ~」と言いたくなります。しかし、ここで関東の方に誤解されると困るのは、この「あほ」が「愛のある『あほ』」だということです。

「何故このようなプロジェクトを続けているのですか?」と尋ねると、wahの南川さんは間髪入れず「それはやっぱりおもしろいことをしたいからですね。」とおっしゃいました。wahさんのおもしろいとはどういうことなのでしょうか ?『照明器具を飛ばす』というプロジェクトでは、ヘリコプターで照明器具を空に釣りあげる時、参加者や協力業者の人たちは「天気も悪いしどうなんの?」と不安だったそうです。しかし、ヘリコプターが飛び立ち、照明器具の紐がピンと張って上空に上がると、下に広がる田んぼが畳に見え、何とも言えない感じがしたそうです。照明器具が空を飛び、空が天井に、田んぼが畳に見えた瞬間、その場にいた人たちはこのアイデアがただのアイデアから作品になったと感じました。この一瞬の感覚をみんなで共有できるのは参加型のプロジェクトならでは。もしも美術館で展示するとしたら、その背景をいちいち説明しなければならないでしょう。説明的な言葉を使うことなくフレッシュな感覚と時間を共有できることが「おもしろい」のではないかと思いました。

現在進行中のプロジェクトは「自分たちで船を造って無人島に行く」というもの。無人島に行くのは、北本の子どもたち「はみ出し探検隊」。wah と子どもたちは本気で向き合い、一緒に船を造っています。今は団地の広場で船を造ったり、無人島を探したりしています。なかにはどこに無人島があるのか、詳細な資料を作ってくる子どももいるそうです。子どもたちのためにするのではなく、子どもたちと一緒にすることによって、よりおもしろいプロジェクトになるというwahさんの信念が根本にあるのです。「はみ出し探検隊」の初航海はゴールデンウィークの予定。さぁ、wahさんのこれからの活動に注目です。(H.S.)

編集者のつぶやき…

5号まで 出せた喜び 共有し また来年度 お会いしましょう!(M.S.)/春が近いですねぇ~。(H.S.)/そうですねぇ~もう春ですねぇ~。(H.O.)

執筆:(M.S.)鈴木眞里子/(H.O.) 小田浩子/(H.S.) 齋藤はるか
編集:SMF広報委員会 発行:「交差する風・織りなす場」実行委員会
〒330-0061 埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1 埼玉県立近代美術館内
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文化庁 平成22年度美術館・歴史博物館活動基盤整備支援事業
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